第27期公民館運営審議会答申

更新日:2023年06月30日

国立市社会教育の中核としての公民館の基本的あり方(計画)

答申にあたって

(1)国立市公民館のあゆみ

国立市公民館のあゆみのなかで、いくつかの他市に先駆けた実践が創られてきています。その一つは、なによりも1956(昭和31)年に公民館が住民運動によって開設されたことです。
二つめは、都市型公民館の模索です。都市化が著しかった多摩地域では、生活基盤の整備を求め様々な住民運動が起こりました。この運動の中で住民たちは、それまで、集落の集会所として農村的な活動をしてきた公民館にその拠点を求めるようになりました。住民の自由な溜まり場、集団活動の拠点、そして「私の大学」という三つの機能をもつ、都市公民館の可能性(公民館三階建論)を求めたのです。それを実践したのが国立市公民館です。この実践をもとに提言されたのが、東京都教育委員会発行の「新しい公民館像をめざして」(三多摩テーゼ)でした。この提言には文化創造のひろばという機能が付け加えられています。
三つめには、子育て中の女性の学びを保障するため、公民館保育室を創りあげました。
四つめは「しょうがいをもつ」青年の学習の広場として、青年室とともに喫茶コーナー「わいがや」をつくり、公民館喫茶室の先駆けとなっていることです。
そして五つめには「公民館利用者連絡会」の取り組みがあります。こうした実践のうえに今の公民館があります。

(2)公民館の今

国立市に公民館が誕生して50余年、公民館は国立市社会教育活動の中核を担ってきました。公民館は、市民が自ら実際生活に即した課題を、主権者として自由に集い学び、民主的社会を築いていく活動の広場として役割を果たしてきました。しかし、いまだ公民館は一館だけで、施設の老朽化も否めません。市民のすべてが、気軽に自由に集うためには様々な困難が生じてきています。
しかし、近年、地方自治体をめぐる状況は地方分権、規制緩和という名のもとに、財政の健全化(圧縮)、事務事業の見直し(外部委託)や教育基本法・社会教育法の「改正」などで、公民館を取り巻く状況も厳しくなっています。
公民館は市民が自由に集い、学ぶところです。ユネスコ学習権宣言にもうたわれているように、学ぶことはすべての人々にとっての権利であり、人々が生きるための様々な困難を解決していく力を培うことでもあるのです。この学ぶ権利を自由で平等に保障するために国立市の公民館のあり方を、再創造する必要があると考えます。
国立市公民館運営審議会(以下「公運審」という。)は、公民館のよりよいあり方を実現させたいと、これまでに各期の審議会で答申・要望など様々な提言を行ってきました。

(3)答申の経緯と審議

2008(平成20)年11月、第27期公運審第1回定例会において、公民館長から第26期公運審の『「国立市社会教育の中核としての公民館の基本的あり方(計画)」中間答申』(以下「中間答申」という。)について引き継ぎ審議を継続し「本答申」をお願いいたしたいと諮問がなされました。第27期公運審は、「中間答申」をより実現性のあるものとし、今後計画化が期待される「国立市生涯学習計画(仮称)」や国立市第四期基本構想第二次基本計画に反映できるように、具体的な実現可能な提言をしたいと審議を重ねてきました。
「本答申」には、より広範な市民の公民館への意見・要望を取り入れるため「アンケート調査」「公民館交流会」を実施しました。また、審議会にワーキンググループを設け17回におよぶ検討・協議をし、最終的には公運審の総意としてまとめました。
「本答申」では「中間答申」の文脈を尊重しながら、計画化にあたって課題とされる公民館無償の原則や指定管理者制度、職員問題(削減・専門的職員配置)にも言及し、さらに「公民館とは何か」の原則を確認し、なおかつ分かりやすい文章化に努めました。

(4)本答申の構成

答申にあたって

  1. 計画策定の基本的な考え方
  2. 公民館の運営
  3. 施設・職員・事業・その他
    • 3-1 施設について
    • 3-2 職員について
    • 3-3 事業について
    • 3-4 公民館全般の課題 附属資料

以下、27期公運審の本答申といたします。

計画策定の基本的な考え方

国立市の第四期基本構想には、「しょうがいしゃにとっても、高齢者にとってもやさしさのあるまち」「平和と人権を市民とともに考える」「人と自然にやさしい、誰もがつかいやすい道」「みんなでつくるまち」など、社会教育に関わる課題が数多く見られます。
これらの課題を実現していくためには、市民の自主的・自発的なそして自由な学びが求められ、そのうえに市民の自治的能力が形成されなくてはならないと考えます。
公民館は、そうした主権者である市民を主体にした学びを実現するための社会教育施設であり、それに沿った運営や管理が求められているのです。国立市の公民館はこのような考えに基づいて、いままでも、これからもその歩みが必要とされています。

(1)すべての市民に学習する権利の保障を

日本国憲法は、基本的人権がその柱となっています。市民の学習する権利はこの基本的人権のひとつです。この権利のなかには市民の学ぶ自由と教育無償の原則も同時に保障されているのです。この市民の学習する権利の保障の場が、社会教育であり公民館の役割なのです。社会教育の本質は「憲法学習」であり、主体は市民であると言われますが、まさにこのことを確認したいと考えます。

(2)主権者としての市民の形成

憲法では主権は国民にあると定められています。このことは、地方自治体にも言えることです。国立市の主人公は市民です。地方自治の担い手は市民であり、この市民自治の力のありようにかかっているといえます。社会教育は住民自治の力を培い、民主主義を育むという「枚方(ひらかた)テーゼ」から学ぶことができます。公民館の運営や管理は、この市民の力を活かした新しい公共(協働)が求められています。

(3)人と人そして団体・地域をむすぶネットワーク(世代間交流を含む)

今日の日本社会は、人々の絆が喪失した時代を迎えているとも指摘されています。「無縁社会」の到来ともいわれます。人々のコミュニケーションの力が衰え、また伝統的な地域社会の絆も失われつつあります。公民館はこうした人々や団体・地域を結ぶ要として、実際生活に即した学びのなかで、従来の関係だけでない新たなネットワークが模索される場になると思います。
この新たな関係の構築には、人々の世代を越えた交流やコミュニケーションもその方法のひとつでしょう。

(4)地域文化を創る

公民館には様々な人々が集い活動をしています。公民館はただ学ぶということだけでなく、表現し、発表し、鑑賞し、そしてそれを楽しみながら、豊かな感性を育む場でもあるのです。
また、地域には豊かな歴史、伝承、芸能、行事などがたくさんあります。これらの文化的営みを公民館が支え、市民の「想像し、創造する権利」を保障すること、このことも学習権の保障となるのです。

(5)市民活動の支援

公民館の歴史のなかで、初期の公民館は学習の支援だけでなく、地域の産業や街づくりにも数多く関わってきました。市民生活の様々な活動の側面には、多様な学習が存在します。
社会教育の学びは、公民館だけにあるのではありません。かつて、国立の公民館は商店街の経営者とともに商店に働く青年の学習支援も行っていました。今日、市民生活を豊かにしていく市民活動は、福祉、環境、街づくりと様々です。これらの市民活動とも連携を図る必要があります。そのための市民活動支援のひとつとして情報の収集、発信、活動の紹介・相談の窓口の機能が求められます。

公民館の運営

今まで述べてきましたように基本的な考え方は、国立市公民館活動の歴史のなかから創られてきました。しかし、今日のめまぐるしく変化する社会状況のなかで、市民の日常生活を困難にしている様々な課題が山積みになってきています。
これらの課題を解決するには、地方自治体に新たな公共の仕事への期待を求めています。しかし、自治体を巡る状況は、とくに財政の伸び悩みのなかで、民営委託化をはじめとした、サービスの削減・変更を余儀なくされつつあります。社会教育行政も例外ではありません。首長部局への移管、「評価」システムによる、安易な評価機関による「外部評価」の導入やコンサルタントヘ委託した「事業仕分け」による経費削減などです。
こうしたなかで、市民の学ぶ権利と自由を保障し、本来の市民主権や市民自治の形成のための公民館活動が強く求められてきています。

(1)無料の原則

公民館は、様々な人々が集う施設で、法律で教育機関となっています。とりわけ今日の「競争」と「自己責任」が問われるなかで、社会的弱者と言われる「ワーキングプア」「しょうがいしゃ」「高齢者」などが排除されてきています。すべての人々が公民館を利用し、活動に参加できる環境を醸成するためには、何よりも「無償」である必要があります。
公共財産である道路は、市民が生活するどんな場所にも整備されて、すべての市民が無償で使っているように、おなじく公共財産である公民館も、どんな地域(生活の場所)にも設置され、市民が集い学ぶ環境が整えられる必要があるのです。
市民が生活する周辺に公民館が数多くあれば、道路と同じような市民の理解があるはずです。このことから「受益者負担」という考え方は、税金の二重払いともなるのです。また、今年度から国は高等学校の無償化へ一歩を歩みだしました。学校と同様に公民館も図書館、博物館とともに教育機関です。図書館と博物館は法律で無料が明記されています。それは、納税者としての権利でもあるのです。

(2)直営の原則

地方財政の危機が指摘されるなかで、自治体事業の「外部委託化」が進んでいます。「指定管理者制度」です。しかし、この制度を導入してきた自治体も、ただ、経費の削減や民間委託を目的としてきたところでは、その見直しが求められています。国会での社会教育法の「改正」審議でも、衆参両院の全会一致の付帯決議で、導入への問題点が指摘されています。第25、26期公運審でもその導入には反対の意見書をあげています。

(3)市民参画の原則

公民館制度が発足以来、公民館は市民参画を取り入れてきました。初期公民館では、公民館委員会です。公民館委員は選挙で選ばれていました。また社会教育法のなかでは公運審の設置と、館長人事への公運審の意見聴取も条文に明記されていましたが、地方分権、「規制緩和」の名のもと、館長人事への条文は削除されました。しかし、公運審の市民参画を規定した精神は、国立市公民館条例に今日も引き継がれています。
また、公民館の事業にも、この精神を生かした取り組みが求められます。市民企画事業、講座事業の準備会などへ公運審の積極的関与や市民参画です。社会教育の主体は市民とするならば、このことは譲れないことがらです。市民と職員とのよりよい「協働」が必要となっています。

(4)公民館運営審議会の設置

市民参画の原則でも述べましたが、公運審は市民参画の制度化であるとも考えられます。この公運審の役割に新たに「公民館運営の評価」が付け加えられました。この評価については、社会教育法の改正で第32条の条文に公民館の運営状況に関する評価等として明記されています。
また改正にともなう付帯決議で、衆参両院とも公運審等を通じて地域住民の意見が反映されるよう配慮する必要を指摘しています。この運営(事業)評価へ公運審や市民がどのように関るのかが、住民の自治能力を検証していくことにもなるのではないかと思います。

3-1.公民館施設について

公民館といえば、まずは建物を想いうかべます。国立市公民館は、その機能を市民から期待されながらも充分に応えられる状況にはなっていません。そこで、公民館施設の課題についてのいくつかを述べてみたいと考えます。

(1)公民館施設の現状と課題

現在の公民館は1979(昭和54)年に改築後、約30年間、建物内の小さな改装(オストメイトのトイレ、授乳室)や設備の入れ替え(エレベーター)はあるものの、施設そのものが老朽化し、それに伴い空調、水回り、個々の部屋など全ての箇所がただ単に老朽化しているというだけではなく、利用者が学習し、交流を発展させていく上で不安感を拭いきれない現状です。公共の施設として、耐震化も未着手の状況であり、学習権を保証する以上に危険から生命を守っていく義務があります。そのために公民館施設の見直しは重要であり緊急課題です。
今後、高齢化、国の経済的成長の低下が見込まれ、青少年の精神的バックアップなどが公的な場所で求められ、年令を問わず利用し易い施設として公民館は活用されていくことが予測されます。そのため、これまで要求し続けられてきた公民館3館計画を念頭に置きつつ、現在の厳しい財政状況を考慮し、既存の公的施設の活用や学校施設の相互有効利用等、視点の転換も必要と考えられます。

(2)公民館施設の管理・運営

公民館職員を中心に、公運審、利用団体・グループの代表、各地区からの住民にも公民館施設の管理・運営について定期的に意見交換の場を設定し、安全でより快適な環境の中で学習権を保証した施設維持に向け、公民館の管理・運営に協働出来る体制作りが必要と思われます。それは公民館だけでなく、南・北プラザなどで公民館事業を展開する上で人と人を繋げるコーディネーターの役割を担う目的もあります。

(3)公民館施設の適正配置と公平利用

公民館の施設の適正配置と公平利用および公民館施設・設備の整備についてはアンケート調査を参考に提言をいたします。
南・北プラザを公民館化し、企画事業を展開させていくことは市民が学習権を公平に享受するための手段の一つです。また、高齢者や身体に障害を持つ市民に対して、講座に合わせたバス便のサービスや、広範囲に広がる南部地区の市民に対しても同等のサービスの提供が一つの配慮であり、公民館から遠距離に住む市民の自主的参加を促せるよう、国立駅周辺にある市の駐車場を講座開催時間限定で開放し、その他グループ活動に対しても市の駐車場の料金割引などを考慮する等の措置も必要で、公民館施設の公平利用に少しでも近づけるような何らかの施策が不可欠です。
乳幼児を持つ母親が安心して学習や活動に参加できるように保育室の柔軟な活用も検討されるべき課題です。

(4)公民館施設・設備の整備

利用者にとって安全な施設であることを最優先し、最低限度の快適な設備を保証した施設であるために、清潔で使い易いトイレなどの整備や、多目的利用ができるように、現況の小さく区切られた部屋に可動式壁などを導入し、広さを調整できる等の工夫も必要です。利用団体・グループの団体紹介コーナーを配備し、活動のための消耗品、備品等の保管場所や事務機器(コピー機)の設置は多くの利用者の要望です。
社会教育の現場として、講座やグループ活動に参加したいという気持ちを起こさせるために、公民館の所在のアピールおよび公民館月間企画事業(3ヶ月)、図書室、保育室、貸し出し可能、あるいは利用可能な備品を目に付きやすい場所やホームページ上に表記するなど情報提供の整備も必要です。
さらに、単独で来館しても楽しめるような企画作りは利用団体・グループと共に計画していけるものの一つです(ロビーや喫茶コーナー「わいがや」の活用)。人々が多く集まるために現状の自転車置き場をより安全で利用しやすい自転車置き場に整備することは急務です。

3-2.公民館職員について

公民館の公民館たる所以は、施設の充実だけではありません。公民館の事業や住民の学習や文化活動の相談、情報の提供など、住民の求めに応じて仕事をしてくれる職員の必置が求められます。そこで、職員のあり方についていくつかの提言をいたします。

(1)職員の役割

先の地方分権推進・規制緩和による公民館のカルチャーセンター化、指定管理者への委託など公民館を取り巻く情勢は厳しいものがあります。また職員の削減、財政難による予算削減なども起きています。
このような情勢の中で教育機関としての公民館がその役割を果たし存立していくために、公民館職員の役割は今迄以上に重要になってきていると云えます。学習講座の主催、学習支援という役割だけにとどまらず、人づくり・まちづくりの拠点として、公民館だからこそ、或いは公民館職員だからこそやるべき事を見極め、地域・市民と連携して学習内容・方法を創造していくことが求められていると考えます。

(2)公民館職員に求められるもの

近年度々起きている悲惨な社会的事件を見るとき、その背後に人間関係の希薄化・個人化があることを感じます。語り合える仲間がいたら防げたのではないかと思わずにはいられません。このような状況を考えると、公民館での学習が人と人をつなぎ相互関係・相互協力を培うことを特徴とするとすれば、公民館の学習は、そこに携わる職員の専門力の重要性を改めて認識し直します。 社会状況や教育環境、労働環境等をきちんと見極め、市民要求をしっかり把握し、事業を通して人と人のつながりを進めるなど、職員に求められるものが多くあると思います。幾つかを列挙します。

  • 教育に係る公務労働者であることを意識することが必要ではないでしょうか。公民館は住民の学ぶ権利を保障する教育の場だからです。それはとりもなおさず職員の負う重要な職務と言えます。教育に係る職員は、社会教育においては多種多様な幅広い市民要求に対し、個々に応えることが求められ、そこに一般行政職との職務に差があると考えます。
  • 地域課題や市民の学習要求は多様化しています。様々な要求をきちんと把握し、個々の問題を適格に判断し、学習の機会を提供していく必要があります。その為に職員自らが幅広い視野を持って情報を収集・分析し、事業を企画・運営する力が求められると考えます。
  • 情報に基づく的確な事業計画の立案・実施と、学習者を結びつけ集団化、組織化する能力とその為のコミュニケーション力も重要な資質と言えます。
  • 地域や人とのつながりが希薄化している状況があります。いろいろな組織、例えば他の社会教育機関、行政機関、学校、自治会などとの連携で事業の輪、人とのつながりの輪を広げていく調整力も大事な資質といえます。

(3)職員体制

公民館職員の役割とその職責を考えたとき、社会教育に対する専門性が職員には要求されます。その点から、社会教育に対し意識のある人材の配置、及び資質・能力を養う研修の重要性を先ず考慮すべきです。社会教育主事の有資格者や社会教育に意欲を持つ職員などの配置が求められるところです。
また、事業の実践や研修などにより専門的知識を養うことも欠かせません。研修の制度をきちんと確立し専門的知識を培うことが重要でしょう。
更に、専門的知識を培うという点では、近年見られるような在職2から3年での人事異動は行うべきではないと考えます。公民館職員には先ず地域のことを知ることが求められますが、2から3年での在職ではこのことは果たせません。
加えて、公民館在職の短期化は、市民との結びつきの希薄化を招くばかりでなく、学習や活動の継続性を失わせます。社会教育の有資格者や意欲ある職員の配置や、研修機会を強化することにより専門性を養うなど、長期的視野にたった職員体制作りが今必要であると言えます。

3-3.公民館事業について

国立市公民館の事業は、「社会教育とは憲法学習である」という考えと「ユネスコ学習権宣言」に基づいて行われています。国立市公民館の事業に対する評価は全国的にも高く、多くの市民が関心を持っています。その事業がさらに社会教育の中核としての公民館の役割を果たすものになるための提言を、事業種類ごとに行います。

(1)講座・学習会

企画は職員によって行われ、魅力的な講座もたくさんありますが、多彩な分野の発案を得、市民の要望を活かすために市民参加も取り入れることが考えられます。長期にわたりいろいろな企画を提案していく企画実行委員会方式、職員提案の企画に市民がかかわっていく準備会方式、市民自らが単発の企画を提案する市民企画事業方式などです。
講師が充実していることも国立市公民館の大きな特色ですが、市民自らが講師に登録する方法も提案します。
内容は講義中心の座学の踏襲ではなく、ワークショップ、フィールドワーク、イベント、社会への働きかけなど、多彩で自由なものにしていき、講師まかせではなく職員も進行にかかわり、講座の質の向上に気を配るようにすることが求められます。参加人数とともに、講座終了後に自主的な活動グループができるか否かが講座の成否と考えられます。
参加者は年齢、性別、職業、社会的立場にかかわらず、全ての人が学べるようにするとともに、青年、しょうがいしゃ、外国人、男性、高齢者など、特に対象を絞って実施することも効果的です。
場所は、1館しかない公民館にこだわるのではなく、北プラザ南プラザ等の既存の生涯学習施設も活用していくことが考えられます。
宣伝については、『公民館だより』はもとより、市の掲示板や駅、公共施設へのポスターの掲示などを積極的に行い、講座の内容をはじめ公民館自体も市民に知らせていくことが大切です。

(2)公民館だより

情報提供事業としての『公民館だより』(以下「だより」という。)は、1956(昭和31)年に創刊され、「独立発行、毎月発行、全戸配布」の三原則で2010(平成20)年2月に600号を迎えました。アンケートによると、9割の方が「だより」を知っていて、8割の方が読んでいます。市民による編集研究委員会と職員との協力により作成されています。市民活動の広報、記録、学習教材として、より読みやすく充実した紙面が期待されます。

(3)図書室

公民館の図書室は、講座に関る図書や資料をそろえている場所であり、一般の図書館とは目的が違う場所です。今後、市内における市民活動情報の集約と活用、地域文化の資料収集が期待されます。

(4)施設提供

活発な市民活動のために施設提供は必要不可欠な事業です。1971(昭和46)年から市民によって自主的に行われてきた「公民館利用者連絡会」の調整会は、2010(平成22)年3月から公民館主催で行われるようになりました。
先着順の原則の下、調整によってみんなが使えるようにすることは市民同士のつながりをより強くすることです。インターネット予約に対する希望も出てきていますが、人のつながり、団体登録、情報流出の問題等慎重に対応しなければいけないことだと考えます。

(5)市民活動支援

チラシ置き場、掲示コーナーの設置、印刷機の貸し出しなどを行っていますが、まだ十分とは言えない状況です。コピー機や折り機の設置、利用団体、グループの紹介コーナーの設置や、サークル活動のための用品保管場所の設置も求められます。
また、利用者や利用団体間の交流会の実施、サークルや団体の情報提供なども今後の活動のための大切な支援となります。そのためには図書室の機能と市民活動情報の収集、発信や市民活動の紹介・相談などの窓口との連携が求められます。

3-4.公民館全般の課題

基本的なあり方の項でも指摘してありますが、ここでは、国立市公民館に絞った課題を、重複は否めないものの、あえて、いくつかの原則について述べてみたいと考えます。

(1)施設利用は今後も無料にする。

公民館を会議等で利用する団体の多くは、「国際理解と国際交流」「地域社会への奉仕」、「地域での新たな仲間作り」、「公民館の講座受講者が自主活動として継続して活動する」、「地域の活性化」など、国立市が基本計画としてのテーマである「出あい・認めあい・支えあい人間を大切にするまち」に沿ったものです。指導者や講師に謝礼を払って学ぶ、いわゆる教養講座や趣味等のサークル活動ではありません。
また、高齢化が進む状況を考えた時に、高齢者の「仲間作り」を提供する場や主催する団体の活動の場を設ける必要があります。こうした活動は、市の行政計画を市民の立場で実行していくことになります。
これからの公民館は、このような市民の活動の中心的な拠点ととらえ、単なる「受益者負担」の視点から使用料を有料化することは良策と言えません。有料化は、市民に負担感を与え、国立市の将来の街づくりを停滞させる恐れもあると危惧されます。なお、近隣の多くの市では公民館の利用を有料化していることも事実です。しかし、同時に無料の減免措置もあわせて規定されています。そのため実質的には「無料」に等しくなっています。

(2)利用者との定期的な意見交換の場を設定する。

公民館は、「人が出会い、つながる」場です。一人ひとりが学ぶ主体として事業に参加する場です。現在は、多くの市民が生涯にわたって学習を継続したいと願っています。こうした市民の願いを実現するには、効率的で効果的な事業が求められます。
公民館の事業は、行政側が一方的に市民に与えるものであってはなりません。現に事業に参加している市民だけでなく、今後利用を希望する市民の声を掘り起こすことも大切です。このためには、定期的に行政と市民とが、忌憚無く意見や要望を出し合い、より良いものにしていく機会が不可欠です。今後は少なくとも、年に数回の意見交換の場を設定していくことを要望します。

(3)人とのつながりを大切にする受付事務をめざす。

公民館の利用申し込みをする際に、インターネットを利用し効率化を図る市もあります。空室状況の確認、遠方からの申し込みが可能など、確かに利便性があります。しかし、その反面、人とのつながりに欠ける無機質なつながりとなる恐れがあります。
窓口に直接出向き、職員とコミュニケーションを取りながら事務を行うことの意義は大きいと考えます。多くの市民と行政職員が直接言葉を交わす過程こそ、利用団体の活動内容、施設利用の規定を確認することもできます。人と出会い、つながってこそ、市民のための公民館活動になると考えます。
ましてや高齢化が進めば、申込者と向き合う受付事務こそ、ミスを防止するだけではなく、市民に対して行政がどのように対応したらといったヒントや、幅広い声を聞き取るチャンスがここにあると考えます。

(4)公民館の運営を外部に委託する方式はとらない。

公的施設の管理・運営を外部に委託する動きがあります。施設そのものの管理や事務の一部など、業務が明確な事柄は職員以外に委託することは、時には経費削減などの効果があります。しかし、公民館の事業の本質は、社会教育を実践する中核的な役割にあります。教育は、「質」の向上こそが求める目標です。質の向上は、計画的、継続的に取り組まなければとうてい実現できません。
外部に委託することは、同一組織に継続的な契約を保障することにはなりません。また、担当する人も長期にわたって在職する保障はありません。こうしたデメリットを考えると、公民館の担う社会教育の事業を外部に委託することは、市民サービスの質的低下を招きかねません。

(5)市民参加の「事業評価」を行う。

2007(平成19)年度から国立市は、各種の事業に対する評価を実施しています。公民館に関しては、「生涯学習の推進」の視点から7つの事業が評価対象に取り上げられています。主な事業としては「公民館主催学習事業」、「公民館会場利用(貸出)事業」があります。いずれの事業でも、評価項目として、目的や効果などが含まれていますが、評価者が担当部署の責任者となっています。市民からみた評価が含まれていません。公民館の事業が、真に市民の生活に密着したものにするためにも「事業評価」のあり方を改善する必要があります。

第27期国立市公民館運営審議会

2010年10月12日

  • 阿部ひろみ
  • 武内法行(委員長)
  • 伊藤雄司
  • 長谷川玲子
  • 太田佳宏
  • 藤城裕子
  • 大谷俊樹
  • 森本信雄
  • 大塚靖子
  • 山崎 功(副委員長)
  • 大原和子
  • 山崎由紀子
  • 木村 元
  • 吉田和彦
  • 下平孟功

関連情報

この記事に関するお問い合わせ先

教育委員会 教育部 公民館



住所:186-0004
国立市中1-15-1
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電話:042-572-5141
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