一橋大学大学院言語社会研究科との連携
2017年3月末、公民館と一橋大学大学院言語社会研究科は、社会連携に関する覚書を取り交わしました。近年、公民館では、言語社会研究科で積みあげられてきた豊かな「人文学」の研究成果と、市民の社会教育・生涯学習との相互の交流・発展を目指して、様々な連携事業を実施してきました(下の「これまでの連携事業実績」参照)。
今後、さらなる協同を推進する覚書の取り交わしを機に、いつもご尽力いただいている一橋大学教授・武村知子さん(写真左端)に文章を寄せていただきました。
取り交わした覚書をもつ坂井言語社会研究科長(中央前列左)と石田公民館長(中央前列右)
2013年以来、一部の教員および大学院生を中心に、公民館と、市民のみなさんとの協同によるささやかな企画がヴォランタリーに試みられてきました。大学という囲いの外へ踏み出て、多様な学問の営みを、すぐ外側にひろがっている地域社会の営みにどうしたら自然に、しなやかに接続できるだろうか? その手さぐりの試みのなかで、市民のみなさんの広やかな暖かさと厳しさに触れ、そのつど教員も学生も身の引き締まる思いをしながら、大学院で学ぶのとはまた異なったさまざまなことを日々学んできました。
国立市公民館が確固たる伝統をもつ筋金入りの公共活動母体であるのにひきかえ、一橋大学大学院言語社会研究科は総勢たったの16名、2016年度に創立20周年を迎えたばかりです。ここ公民館で与えられる貴重な経験に報いるだけのものをちゃんと提供してゆけるかどうか、それは私たちに課される重い課題ですが、「社会科学の総合大学」一橋大学の片隅で「人文学」をこととする私たちの営為は、おそらくいかなる学問にも増して、誰もが日々の生活の中で学びとろうとする様々なものごとと密に接続しているはずだと確信しています。共に手を携えて他にはない経験の場をつくり、その経験を可能な限り豊かなものにしてゆければと、一同こころから願っている次第です。今回の覚書取り交わしをひとつの節目として、その願いがさらに広く遠くまで届くようになるならば、このうえなく嬉しいことです。ささやかなことも深淵なことも人生の奥底で共有しながら、異なる視点を織り交ぜて、一緒に広い世界を探究してゆきたいと思います。
一橋大学大学院言語社会研究科評議員 武村知子
これまでの連携事業のあゆみ
院生講座
現役の一橋大学院生が講師となり、専門の研究分野についてお話をうかがい、ディスカッションなどを行いながら、ともに考える講座です。
2013(平成25)年度
2014年2月から3月「映画の音響効果学 -見えない声から何かが見える?-」
2014(平成26)年度
2014年5月から6月 「建築と映像 -光と影から見る建築-」
2014年10月から11月 「世にも奇妙な小津映画 -揺れない列車と鳴り続けるピアノ-」
2015年2月 「テレビに宇宙人がやってきた! -初期ウルトラシリーズから迫る“本格特撮テレビ
2015(平成27)年度
2015年6月「-救いをもたらすのは一体誰?- オペラにおけるフィナーレの変遷」
2015年12月「『故郷』とはいかなる場所か?-『苦界浄土 わが水俣病』と流民の故郷-」
2016(平成28)年度
2016年5月から6月 「近代中国における自伝の誕生」
2016年12月 「日本は『見える』のか?-『異文化』として日本と翻訳の問題-」
2017年3月から4月 「忘れられた画家 -抽象表現主義前夜の『美術』をめぐって-」
2017(平成29)年度
2017年7月 「『人間の性質』の改良の思想 -優生学を考える-」
2017年11月から12月 「ジャック・デリダと『遺産相続の哲学』」
2018(平成30)年度
2018年5月 「昆虫採集の光と闇」
2018年9月から10月 「上海モダニズム作家たちの葛藤」
2019年2月から3月 「この女(ひと)を見よ-サラ・コフマン自伝『オルドネル通り、ラバ通り』を読む-」
2019(令和元)年度
2019年9月から10月 「中国・明代の喫茶文化 -水と文人の隠遁思想-」
2020(令和2)年度
2020年8月 「60年代以前のチェコスロヴァキア映画-映画『鳩』が映すもの-」
2020年10月から11月 「『親日』って何だろう?-台湾映画『海角七号』(2008年)に見る対日意識-」
2022(令和4)年度
2022年7月から8月 「背景を越えて -展示空間が美術作品に関与するとき-」
2022年11月から12月 「Konzertのかたち -音楽家メンデルスゾーンの功績-」
2023(令和5)年度
2023年6月から7月 「文化のなかのしょうがい -既存のイメージを超えて-」
連携講座
一橋大学言語社会研究科の教員にコーディネーターとして協力していただき、最新の研究内容について、グループワークなどを交えながら、相互に学び合う講座です。
2014(平成26)年度
2015年1月から3月 「『寛容』について学び、伝え、考える」
2015(平成27)年度
2016年1月から3月 「『クリーン』なものと『クリーン』でないもの -今日の『不寛容』について考える-」
2016(平成28)年度
2017年1月から3月 「街角にいつも『大学』がある -くにたち教養マッピング-」
2017(平成29)年度
2018年3月から4月 「『分類』について考える-くにたち文教マッピングに向けて-」
2018(平成30)年度
2019年3月 「『広島』をめぐる知のプリズム –語り・空間・映像-」
2020(令和2)年度
2020年11月から2021年2月 「4人の写真家との対話」
2021(令和3)年度
2022年2月から3月 「『時代劇』を振り返る -“生き死に”の型、人の世の夢-」
2022(令和4)年度
2023年2月から3月 「フランス菓子の魅惑 -夢と奈落-」
2023(令和5)年度
2024年2月から3月 「ディスカッション再考」
そのほかの活動
・2013年4月から2014年3月 《くにたちPoD》
国立市民、一橋大学言語社会研究科教員・大学院生、公民館職員による自主勉強会。
1年間にわたり、ワークショップを行い、院生講座・連携講座発足のきっかけとなった。
取り組みをまとめた記事はこちらから
HERMES-IR : Research & Education Resources
・2019年1月 スロヴェニア映画上映会・パネルトーク 『雄鶏の朝食』
公民館・一橋大学言語社会研究科共催企画として実施
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更新日:2024年12月14日